
人間が持つにおいに関する遺伝子は、500~700個といわれています。
味覚が5個、視覚3個といった数と比較すると大変な違いです。
しかも、それが人遺伝子の総数の2%に相当するとしたらどうでしょうか。
人間が、どれだけにおいを重視した作りになっているかがわかりますね。
ニオイに関するノーベル賞
2004年、においに関しての画期的な研究に、ノーベル医学生理学賞が与えられました。
米コロンビア大学のリチヤード・アクセル教授と、米フレッド・ハッチンソンがん研究センターのリンダ・バック博士らは、遺伝子工学的な方法を用いて研究を行いました。
においを受け取るセンサーとして機能する受容体が、ラットにおいて約1000種類あることを突きとめたのです。
さらに1つの嗅細胞が持つ、においの受容体は、1種類であることも発見しています。
これは、1つのにおいに対して1つの細胞がにおいを認知しているということで、1980年代には、20種類しかないと言われていたことから考えると、劇的な発見になります。
今後この遺伝子標識という技術を用いて、1000種類ある受容体のどれが発現するかで、ひとつひとつの嗅覚細胞の識別が可能になります。
また、個々のにおい情報がどのような回路を伝わって脳に流れるかが判明するでしょう。
それは、中枢神経の回路形成のしくみを解明するうえで、嗅覚が非常に役立つ可能性があります。
実はこのノーベル賞は、脳の高次機能解明につながるとして、高い評価を得ました。
においの本質解明は、まだまだ先です。
しかし、においの本質解明には、まだほど遠いのが現状です。
人には、350種類ほどのにおい受容体遺伝子があると言われていますが、においの種類は、約40万種あるのです!
そのうち、人間が嗅ぎ分けることができるにおいは、約1万種です。
これは、ほんの人握りです。
この地球上にある、約40万種類ものにおい分子を人や動物は、どうやって嗅ぎ分けているのでしょうか?
おそらく、複数のにおい受容体遺伝子を組み合わせて識別していると考えられます。
そんなにおいの受け手である嗅細胞はいくつあるのでしょうか?
鼻の上部にあるにおいの感知器官、嗅細胞、嗅粘膜は、人で約500万個、切手1枚分の大きさです。
嗅覚に優れた犬と人間との比較

一番鼻がききそうな犬の嗅覚はどうでしょう。
犬の嗅細胞は、約2億個で、鼻腔全体の上部に嗅粘膜が張りめぐらされています。
その嗅細胞1個あたりの表面積は、シェパード犬で79平方メートルに対して、人はその1万分の1です。
これだけでも大きな差をつけられています。
そして嗅細胞から伸びる触角ともいえる嗅繊毛は、長さ30~50ミクロンと長いうえ、約125本あります。
人の嗅繊毛が数本で、長さが1~2ミクロンいうことから、犬は人間とは、段違いの数であり、またサイズも違うのです。
犬は、人間よりはるかにたくさんのにおい分子を、嗅ぎ分けられそうなことがにおいの受け手である嗅細胞の数からもわかりますね。
もし、犬と言葉が通じるようになれば、どのようなにおいが感じられるのかがわかり、においの研究も発展するに違いありませんね。
においが届く距離を測定するのほ難しい。
においが届く距離は、そのにおいの濃度や性質によって異なります。
揮発性の強いものは、広がりやすい性質を持ちます。
そして、濃度が濃いにおいは、強烈ににおいを発揮しやすい性質があります。
においの強さを表す時の基準として使われる数値として、閾値(いきち)があります。
においが生じるために必要な、におい物質の最小濃度を示したもので、容積の割合で割られるものです。
例として、メタノール(100.0ppm)、アセトン(100.0ppm)などの甘いニオイや、アンモニア(46.8ppm)や、ジメチルアセトアミド(46.8ppm)、ジメチルホルムアミド(100.0ppm)のような刺激臭においで、閾値が高い傾向があるようです。
反対にメチルメルカプタン(0.0021ppm)のように刺激がある硫黄臭や、トリメチルアミン(0.00021ppm)、刺激のある魚臭は、閾値が低いです。
こうしたにおいは、感じやすいため、人に「認知されやすい=広がりやすい」という見方もあります。
しかし、嗅覚というのは、その人の体調、精神状態などによって影響が出ます。
文献などに掲載されている閾値もそれぞれにばらつきがあり、大きい時には1桁、濃度でいえば1万倍から10万倍の差がでることもあります。
危険なガスには、察知できるようににおいが付けてあります。
ガスなどの無臭の気体は、誰でもすぐにガス漏れの危険に気づくように、わざとにおい付けしています。
都市ガスやプロパンガスでは、タマネギや卵の腐ったようなにおいを付けています。
タマネギのにおいは、ターシャリープチルメルカプタン(タマネギの腐ったようなにおい)、ジメチルサルファイド(ニンニクのようなにおい)、テラヒドロチオフェン(昔の石炭ガスのようなにおい)が付けられています。
このにおいの選択基準は、微量でも漏れたときにすぐに気付くように、でも気持ち悪くなったり健康を害するにおいではいけません。
そして火で燃やせば完全燃焼し、燃焼後は、無臭かつ有害な物質を発生しないもの、という視点で選ばれています。
あとは風の向きや強さによります。
そのとき微風でもあれば、それに乗ってにおいが拡散していきます。
妙なにおいだなと感じた時は、風上へ退避するようにしましょう。

