
嗅覚の鋭い動物の実力は、よくわかっていません。その詳細についても、完全には解析されていません。
それは、動物達の嗅覚の実力を定量的に計ることができないからです。
しかし、ある判断の基準があります。それは鼻の中の嗅粘膜の大きさです。
嗅細胞の大きさや形にはそれほど差はありませんが、これだけは各動物で大きく違いが見られるのです。
犬の嗅粘膜は、鼻腔内の大部分を占めています。
しかし 人間は、犬と比べるとひじょうに小さいのです。嗅粘膜の広さは、シェパードの成犬なら約1,470㎠です。
人間は、約24㎠ですから、どれだけ大きいかがわかりますね。
犬には、約2億個の嗅細胞があり、そのおのおのが30~50ミクロンの長さの嗅繊毛を約125本持っているので、嗅細胞の先端と嗅繊毛のすべての表面積が、犬だと約7.9㎡にもなります。
一方、人間には約500万個の嗅細胞があり、おのおの1~2ミクロンの嗅繊毛を持つので、総面積は、0.00075㎡です。
人間は、犬の1万分の1にしか満たないのです!!
この広さの違いが単純に嗅覚の差につながるかといえば、それもはっきりとはわかっていません。
また、このほかに嗅細胞や嗅繊毛、嗅球の大きさにもよると考えられています。
犬のほかに烏やラット、ウサギ、カメ、ヘビなども、体に対して比較的大きな嗅球を持っていますが、これが直接臭いに対し反応が高い理由であるかという点については、まだわかっていません。
人間の嗅覚は、犬とは比較できないということですね。
鋭い嗅覚を持つ鳥類

鳥類も嗅覚がひじょうに鋭いと言われています。
カナリアは、炭坑のガス漏れ検知などにも使われた事例があり、毒ガスセンサーとしての経歴を持ちます。
カナリアは、ごく微弱なガスの臭いに、敏感に反応します。
烏類ではほかに、トンビが10~30メートル上空を旋回して飛びながら、体温で上昇してくるネズミの体臭を嗅ぎつけます。それを追跡して、今度は視覚でとらえて捕獲します。
日本で起こったサリン事件の時も、カナリアが持ち込まれました。
魚類などの嗅覚の鋭さ

魚類では、ウナギの嗅覚の鋭さが優れていることが知られています。臭いの種類によっては、犬以上の嗅覚を発揮するともいわれます。
ウナギを飼っている池の中に、アミノ酸溶液だけで、群れをなして集まってきます。ウナギの嗅覚は、1万トンの水の中の1グラムのアミノ酸だけでも感知できるといいます。
ウナギは南洋で生まれ、大きくなるに従って北上を始め、日本などの川を遡上します。
その生態は、まだ十分にわかっていません。ただ、暗闇の中で獲物を捕獲するようで、魚類の場合は、視覚が弱いものほど、嗅覚が鋭いのです。
ウナギは、その代表格と言えるでしょう。
サケが生まれ故郷の川に帰ってくるのも、その川の臭いに対する記憶によります。
ウミガメが産卵のために、生まれ故郷の島に帰ってくるのも同様です。
象の嗅覚の鋭さ

鼻の長い象も、見た目通りの鋭い嗅覚を持つ動物です。
白人の象狩りが盛んな頃、象は、白人を極度に恐れていました。
一度狩りを逃れた象は、現地人が同じくらいの距離を離れたところにいる場合は、逃げもせずに悠々としていたというのです。
このことからわかるのは、象は5キロ離れたところの白人と現地人のニオイを嗅ぎ分けて
いるということです。
また、地下にある水のありかを嗅ぎ当てるので、象について行くと、乾季の水不足の時に水にありつけることがあるそうです。
動物の特に鋭い3つの嗅覚
① 食に関するもので、食べられる物と食べられない物を選別すること。
② その場の環境の変化を知ること。
③ 敵と仲間とを判別すること。
これらには、敵から素早く逃げるためにその臭いを察知することや、交尾のためにメスを探すオスの行動も含まれます。
嗅覚と聴覚のバランスの必要性

その一方で、目が発達したなどの霊長類や、腐肉を食べるコンドルを除いた鳥類などは、それほど嗅覚が発達しているとは言えないようです。
昆虫などを食べるコウモリも、嗅覚よりもソーナーのような音波による位置確認によって捕食し、もともと陸上動物だったクジラも、未だに水中生活に嗅覚が順応しているとは言えません。
嗅覚の代わりに発達しているのが、聴覚という状況なのです。このように、犬が人間よりも嗅覚が鋭く発達しているのは、周知のとおりです。
しかし、日々訓練している調香師などは、数千もの香りを嗅ぎ分けることができます。
そのため、臭い分析の機械、ガスクロマトグラフを用いても検出されないほど、薄い臭いを訓香師たちは、嗅ぎ分けられるのです。
もちろん人間なので、体調による変動はあります。
1日のうちで朝、昼、夜によっても変わります。
しかし、この調香師の例は、訓練次第で人の嗅感覚は研ぎ澄まされるという、最たる例なのです。
動物の持つ嗅覚のまとめ。

動物達の嗅覚を計ることは、ひじょうに難しいので、ランク付けすることはできないと思います。
動物の嗅覚については、今後も研究が進められていくでしょう。

