
腸の健康維持とは、どのようなものでしょう。
腸を健康に保つためには、大腸内視鏡検査に加えて、日々の生活が大切です。
内視鏡でとくに目立った病気は見つからなかったけれど、「便秘がちである」とか「下痢が多い」などの排便異常がある場合は、腸の働きに問題があると考えて、積極的に「腸をよくする生活」を心がけましょう。
なぜなら、腸の働きが悪化すると、全身の健康も悪化していく危険があるからです。
つまり、「腸の働きが悪いのは、病気の一歩手前」と考えられるのです。
漢方医学の世界では、こうした状態を「未病(みびょう)」といい、養生を中心とした生活療法を指導しています。
日頃から腸をもっといたわりましょう。
腸を健康に保つための生活習慣は、腸が自分の健康を支える上でいかに大事かということを認識しましょう。
腸の働きを分類すると大きく4つになります。
①消化 ②吸収 ③排泄(解毒) ④免疫
腸の消化・吸収という大切な働き

消化・吸収という腸の働きは、誰でもが知っている働きです。
消化・吸収は、食べたり飲んだりしたものから、生きていくために必要な栄養素をとりこむ大切な働きです。
消化・吸収にかかわる器官は、口、食道、胃、小腸です。
これらは、1本の長い管になっていて、このうち6~7メートルを小腸が占めています。
口から食べたり飲んだりしたものは、食道から胃に入り、そこで一部は消化されますが、大部分は消化しやすい形にくだかれて、まず小腸に送りこまれます。
小腸は、胃に近いほうから十二指腸、空腸、回腸に分けられます。
食べ物が十二指腸へ入ると、膨臓から臓液(すいえき)が分泌されて、炭水化物・たんぱく質・脂質を分解します。
また、胆嚢(たんのう)からは、胆汁が分泌されて、脂肪の消化を助けます。
空腸と回腸は腸液を分泌し、炭水化物・たんぱく質・脂質を最終的に分解し、吸収します。
食べ物は、4時間くらいかけて小腸を通過し、この間におもな栄養素はほとんど吸収されて、残った食べかすが大腸に送られます。
腸の健康の必要性
もし、腸が健康に働かなくなると、体に必要な栄養が取り込まれなくなるため、全身の働きに支障が出てきます。
手術などで絶食状態におかれると、腸の一部の機能が働かなくなり、その結果、腸の粘膜などに障害が起きやすくなります。
腸は、食べ物が定期的に入ってくるから働くのであり、また、きちんと働いてもらうためには、健康な状態で動いてもらわなければなりません。
そのためにも、きちんと三度の食事をとること、暴飲暴食で腸に負担をかけすぎないこと、また腸を動かすための神経伝達物質や消化液がスムーズに分泌されるよう、ストレスを避けて十分な睡眠をとることなども大事になってきます。
排泄(解毒)という腸の大切な働き

消化・吸収を担当している小腸に対し、腸の大切な働きの3つめの「排泄」を担当しているのは大腸です。
排泄には、「食べ物の栄養分と水分を吸収したあとの老廃物(食べかす)の排池」と、「食べ物の中に含まれる有害成分や体内で生まれる毒素の排泄」の両方があります。
後者は、毒素(有害物質)を排出するという意味で「解毒」とも呼ばれます。
有害物質とは、2種類あり、一つは、食品添加物や残留農薬、汚染物質など体の外から侵入するもの、もう一つは、老廃物が長時間体内に留まることによって発生するものでです。
大腸には、これらの有害物質が集まり、ときに相互作用を起こしながら、有害物質以外に有毒ガスや活性酸素などもため込んでいきます。
これを便ごと外に出す働きをするのが大腸です。
排泄(解毒)のシステムがうまく働かないと、老廃物が体内に留まることになり、それがすぐに症状としては表れないとしても、いずれは不調の原因となります。
つまり、私たち人間は、「排泄」という行為を通して、体の毒素を排出しているのです。
この排泄がうまくいかないと、体内に有害物質がたまり、やがて色々な不調が起こってきます。
排泄機能が働かないと体に毒がたまっていきます。

便が排泄されず、便秘が続くようになると、有毒ガスなどもたまり、次第にお腹の圧迫感や膨満感が表れれ(ガス腹)、下腹もポッコリ出てきます。
これは、腹部の内圧(腹圧)が上がるからです。
この状態が続くと、食後に下垂してきた胃が圧迫されて胃の内容物の逆流を招き、胸焼けやゲップの原因となる「逆流性食道炎」を起こすこともあります。
また、便が出ない状態が続くと新陳代謝も低下するため、脂肪が燃焼しにくくなり、太りやすくもなってきます。
お腹に冷えの症状も出てきます。
これは、血液内に有害物質が増えることで血行不良が起き、循環が悪くなることが原因と言われています。
冷えが関係している肩こりや、腰痛などを訴える人もたくさんいます。
ニキビなどの肌荒れもしやすくなります。
これは悪玉菌が増殖して腸内環境が悪化した結果、有害物質が体内をめぐることが原因と考えられています。
他の臓器への影響
さらに、老廃物には、たんぱく質を分解した結果つくられるインドールやスカトール、アンモニアなどが含まれますが、これらは体臭の原因や便のにおいの元になるので、体臭や便のにおいがきつくなります。
さらに危険なのは、肝臓への影響です。
食べ物が体内で腐敗することで発生するアンモニアは、血管を通ったあと、肝臓で分解されます。
健康な人では問題はありませんが、肝硬変などで肝機能が極端に悪化している場合は、アンモニアの分解が追いつかず、血液からこの有害物質が直接、脳に達して「肝性昏睡」(かんせいこんすい)を起こす危険割もあります。
さらに、大腸がんの危険になる危険もあります。
大腸がんの6~7割は、直腸とS状結腸にできます。
これは、「大腸がんは、有害物質が長く留まるところにできやすい」ことを示しています。
排泄機能の低下による便意の無い状態は危険です。
小腸で消化と吸収が行われたあとの老廃物は、大腸へ送りこまれます。
大腸は、長さ約1.2~1.6メートルです。
小腸に近いほうから、盲腸、結腸(上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)、直腸で構成されています。
大腸に送られた食べかすは、ドロドロの液状になっていて、盲腸を通過したあと結腸に入ります。
この時、結腸全体で強い収縮運動が起き、この力で便が虹門へ向かって押し出されます。
これが「大ぜん動」です。
大ぜん動は1日2、3回しか起こらないと言われていて、しかも、起きやすい時間帯が決まっていて、それは朝食を食べたあとの1時間です。
「朝食をきちんと食べないと、便秘になりやすい」というのは、そういう理由からです。
ウンチの終着駅、S状結腸
老廃物は、時間をかけて結腸を通過し、その間に少しずつ水分やミネラルが吸収されて、S状結腸にたどり着くころには、未消化成分がだんだんと固まって便の状態になっていきます。
S状結腸は、文字通り、S字型にくびれています。
このくびれに便が徐々にたまっていって、次第に膨らんでいきます。
便が一定量に達すると、高まった内圧によって一気に便が直腸に送り込まれます。
直腸に便が送りこまれると、腸の神経が刺激され、直腸の収縮運動を反射的に引き起こします。
この反射が「直腸に便が届いた」という信号(これが便意)となって脳へ伝わり、「便意」として意識されるのです。
便意が意識されると、便は、肛門に向かって押し出されます。
肛門の働き
すると脳から「肛門を開くように」という指令が出され、肛門括約筋がゆるんで便が排出されます。
このように、腸が元気で健康な時には、このようなメカニズムで、排泄が行われています。
ところが、便秘がちな人の中には、この「便意」がうまく起こらない人がたくさんいます。
便意は、医学的に「内臓感覚」と呼ばれるもののひとつです。
内臓感覚とは、心臓や肺、胃や腸などの臓器から生じる感覚のことで、たとえば内臓の痛みや灼熱感、圧迫感、空腹感、口渇感、吐き気、尿意などがあります。
便意は、内臓感覚の代表的な例と言えるものです。
腸は存在する神経細胞や、脳との連動、更に言えば自律神経との関連によって動いていますが、排便の最終段階、つまり、肛門を閉じたり開いたりすることは、本人の意思がないとできません。
大腸の中に便がたくさん溜まっているのに、排便を知らせる便意がないということは、人間の生命にとって危機的な状況といってもおかしくありません。
便意がない方は、要注意です。
積極的に生活療法に取り組む必要がありますね。
便意を我慢していくと、だんだん便意が無くなっていきます。
便意がなくなる引き金として、よくあるのが排便を我慢することです。
「朝、忙しい」、「トイレに行くのがはずかしい」などという理由で我慢していると、次第に便意は無くなっていきます。
下剤による便意の低下
もう一つの原因は下剤です。
薬で便を出す頻度や量が多いほど、便意は正常に起こらなくなってきます。
自力での排便がほとんどなく、連日、下剤を服用している人は、そのほとんどが便意がなくなっています。
便秘外来を受診している人を対象に「便意の有無」について質問した結果があります。
それによると、程度に差はあるものの、「便意がない」と回答した人はじつに90%にもおよびました。
便秘の人は、一度は下剤のお世話になったことがあるでしょう。
下剤はもちろん、一時的に使うのであれば問題はありません。
しかし、下剤は便秘を根本的に治すものではなく、薬の作用で腸を動かし、無理矢理に溜まった便を出しているにすぎません。
このため連日使っていると、腸から脳への指令、あるいは脳から腸への指令が次第にうまくいかなくなり、薬を使わないときに自然な排便ができなくなるのです。
とくに問題となるのが、下剤のうちでも作用が強く使用頻度が高い「アントラキノン系下剤」というタイプです。
この薬は、大腸を刺激して便を出す下剤です。
薬を服用すると、腸が激しく収縮し、便を排出します。
下剤を服用したあとにあらわれる便意は、腸管への強い刺激によって起こる「おなかがしぶる感覚」であり、本来の自然の便意とは違います。
これは便意ではなく、下剤によって起こる「しぶり感」なのです。
自分の便意ではなく、無理に排便をうながすわけです。
入院していて長く手足を使わないと、筋肉が衰えてうまく動かなくなります。
肛門とその周囲にもたくさんの筋肉があり、通常、排便するときは、便を出したり止めたり、ということをコントロールできます。
しかし、下剤を常用していると、こうした筋肉も衰えていき、自然な排便を体がどんどん忘れてしまうのです。
残念ながら、市販されている下剤でもっとも多いタイプが、このアントラキノン系下剤です。
腸の健康のためには、こうした下剤はできるだけ控えた方がいいかもしれません。
やはり、便秘を根本的に改善する治療を受けることが良い方法ですね。
軽い便秘であれば、食事療法でもよくなりますし、中等症以上の場合は、便秘外来のあるクリニックで治療を受けるようにしましょう。
大腸には、免疫の働きがあることがわかってきました。

最近の研究によると、腸には、全身の免疫機能の60%以上を持っていることがわかってきました。
これは、体の中で一番大きな免疫機能を持っていることになります。
その理由は、腸が外の世界とつながっているからで、口から食べ物や飲み物に加えて、微生物などの異物や病原菌も入り込みます。
そのことから、腸が健康を保ち免疫が十分に働かないと、口からの異物や病原菌に対抗できず、体が病気や不調に悩まされることになります。
腸の高い免疫力が注目され始められたのは、腸内細菌との関係からです。
腸内のひだひだの中には、400種類、100兆個もの常在菌が存在していると言われています。
常在菌の種類
これらの常在菌は、腸内環境におよぼす影響から、大きくの3種類に分けられます。
・善玉菌:腸内環境によく働く。
・悪玉菌:腸内環境を悪くする。
・日和見菌:状況によって善玉菌にも悪玉菌にもなる菌
腸が健康であれば、善玉菌20%、悪玉菌10%、日和見菌70%というバランスです。
便秘などで腸内環境が悪くなると、悪玉菌が増えてバランスが崩れ、免疫力が低下します。
腸内細菌が主に住んでいるのは、大腸でです。
小腸にはほとんど菌はいません。
しかし、小腸も免疫機能には、大きく関係しています。
腸管の粘膜には、腸特有のリンパ組織(免疫機能を担うリンパ球が集まる部位)があります。
これは、腸関連リンパ組織と言い、この容積は腸の25%になります。
この腸関連組織が、腸管免疫系を担っています。

